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SCMの狙いは分断されたプロセスの整流化

従来、日本での基幹システムは業務部門のニーズを吸い上げて、部門毎にシステム化を図ってきた。部門毎には最適な業務システムを構築してきたが、全体のビジネスプロセスから見ると必ずしも全体最適ではなく、ビジネスプロセスが分断したシステムになり勝ちであった。
 
これは全体プロセスに対して要求を出す部門や責任を持つ部門が存在しないからである。部門毎のニーズから業務システムを構築する手法に限界がきていることを示していて、全体プロセスを重視するERPの導入が必要になっている。
 
例えば、工場の資材部門ではコストダウンの目標が与えられ、部品をまとめて買うことにより単価の低減を図る。資材部長としては最適の選択かもしれないが、結果として部品在庫を抱えてしまうことがある。
 
製造部門では同じ種類の製品はまとめて作ったほうが効率が良い、製品の物流部門でも同様のことが起こる。今日では、「規模の経済」から「スピードの経済」に変革しており、スケールメリットを生かしコストダウンするよりも、ビジネススピードを早くすることが重要になっている。
 
これはスケールメリットでコストダウンしたように見えても、在庫の滞留により資金が固定されることや、リードタイムが長いことによる受注機会損失がより大きいことが分かってきたからである。
 
例えば半導体の値段が時間とともに下がる時代に、まとめ買いをして半導体の在庫を持てば、本当にコストダウンになっているか、疑問が残る。
 
企業内のビジネスプロセスが分断していたのと同じように、企業間のビジネスプロセスも分断している。個々の企業が自身の最適化を目指すが、サプライチェーン全体でみると在庫が滞留したり、スピードが阻害されていることが多い。
 
従来、これは、企業の独立性ゆえにむしろ当然の事として考えられてきたが、振りかえってみればトヨタのカンバン方式では企業を超えてサプライチェーンがマネージメントされているのである。
 
企業内のビジネスプロセスの流れを良くする理念がBPRであり、それを支える情報技術としてのERPがある。同様に、SCMの場合には異なる企業間のプロセスを整流化するので、情報技術としてのSCPが必須の手段となる。
 
企業内でも全体プロセスの最適化というのは総論賛成ではあるが、部門の利害関係から各論反対になるケースが多い。企業では経営者がいるので総論と各論の調整機能が存在するが、企業間では調整機能が存在しない。
 
日本の産業構造として、原材料輸入から始まり、部品業→組立業→製品業→販売業にいたるサプライチェーンのいずれかの企業がイニチアチブを取ることになる。その企業は自ら情報を開示し、他社から情報を受け取り、サプライチェーン全体のプロセス最適化を図って行くだろう。
 
企業間では、情報はギブアンドテイクであり、一方的に情報提供だけを求めても、相手も応じない。SCMにイニチアチブを取る企業がそのサイプライチェーン全体を制することになる。このため、BPRは企業業績に寄与するのみであるが、SCMでは市場を制覇することが出来るだろう。